株式譲渡における2重の税金

配当所得への2重課税

M&Aに携わっていると、不可思議な税法上の仕組みに頭を悩ますことがあります。子会社、孫会社を持つことが珍しくなくなると、グループ会社間で配当し所得を移動させることが多くなりますが、100%完全子会社であれば全額益金不算入となります。1つの所得に複数回課税されるべきではありませんので、当然と言えます。

しかし、最終的に個人株主に配当する際の配当控除は十分なものではなく、実質的に2重課税がなされていると感じます。これは、理論的に不合理と考えます。

法人間で2重課税が生じることも

子会社で土地に含み益が発生し、その土地を売却して売却益を計上し法人税等を納付したとします。その後、親会社が子会社株式を売却すると、当然売却益の分だけ子会社株式の評価額は上昇しておりますので高く売れます。すると、親会社にまた法人税等が発生します。これは含み益なので所得に2重課税がなされていますが、悪用して損失を複数回取り込んで税金を減らすことも出来てしまいます。

実は、このような2重課税の問題は連結納税を採用することにより緩和されます。連結納税には、企業集団を単一体と捉える考え方がありますので、投資簿価修正がなされるのです。

M&Aで売り手に発生する2重課税

実はM&Aでよく採用される株式譲渡にも同様に2重課税が発生します。所得が生じた際に既に法人税等を支払っていますが、親会社がこの子会社株式を売却すると売却益に再び法人税等が発生するのです。これらは、ストラクチャリングを工夫することである程度緩和することができる場合があります。

買い手では逆のことができる

買い手が、株式を譲受け100%子会社にしたとします。子会社の資産等を現物配当し、子会社の経済的価値を引き下げて売却すると多額の損金が計上できてしまいます。事業は親会社に移管しているわけですから、M&Aの目的は問題なく果たせる訳です。

これは、実態として何らの損失も生じていないのに多額の損金を計上できてしまうわけですが、原因は売り手が2重に法人税等を支払っているところにあるのです。既に課税がなされているにも関わらず売却益にさらに課税がなされる以上、損金性のない売却損もまた損金として容認せざるを得ないのです。

根本的原因

株式の譲渡所得(キャピタルゲイン)と配当所得(インカムゲイン)は、過去の利益を株主に帰属される方法が異なるだけで同質のものです。にも関わらず両者の課税の仕組みに相違があり、かつ2重課税の排除がなされていないことが根本的原因だと考えます。

このような歪んだ制度は他にも波及しています。株式からの配当は保有期間が短かったり、保有比率が低いと配当の益金不算入が十分になされません。制度趣旨として、株式を購入し、すぐ配当を受け取り売却することにより損金を生み出すことができてしまうためと説明されるのですが、課税済みの所得を移動させても課税がなされないのは本来当然であり、売却損が損金算入できることが本質的な問題なのです。

これは、売却益の益金算入に課税がなされ2重課税をしていることの裏返しであり、M&Aを複雑していると言えます。

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