グループ通算制度の大きなデメリットとなる投資簿価修正
連結納税制度からの改正
連結納税制は、組織再編税制と整合性がとれていない部分が多く、複雑な制度となっておりました。また、1つ修正が生じるとグループ全体の修正を要する等、実務上の問題点も抱えており、改正がなされてグループ通算制度になります。
謎が深まる投資簿価修正の改正
連結納税制度での投資簿価修正は、持分法のような考え方を適用し、取得原価に取得後の利益や損失を加減算して売却時の譲渡原価を算出していました。子会社が利益を出した際に当然課税される訳ですから、これがないと2重課税が生じてしまいます。理解できる制度です。
グループ通算制度では、「簿価純資産」が売却時の譲渡原価となるようです。のれんが生じている場合問題となります。純資産500の会社株式を1,000で取得、そのまま1,000で売却すると、簿価純資産は500ですから売却益500が税務上生じるという謎の制度になっております。1,000で買って、1,000で売ったのに課税が生じてしまうのです。以下、新制度の意図するところを考察いたします。
時価評価範囲の縮小により起こること
組織再編税制と整合的に、一定の条件を満たした子会社や、共同事業要件を満たしてグループ通算制度に法人を組み込む場合、時価評価が不要となりました。これで考えられるのが「含み益」の持ち込みではないでしょうか。新法人をグループ通算制度に組み込む、時価評価が不要となれば、共同事業要件で全株取得し、益をグループ通算制度に持ち込み実現させて、さらに投資簿価修正で譲渡原価を引き上げて売却時の課税もない、みたいな事案を懸念したのではないでしょうか。
取得原価と簿価純資産の差額=含み益と考えている?
簿価純資産500の会社を1,000で購入し、この差額500が資産の含み益であるとの前提に立てば、まあグループ通算制度の規定も分からないことはありません。含み益を実現させて500益金が生じる。そして、譲渡原価が簿価純資産であるなら1,000ですから、譲渡時に課税は生じず2重課税は生じていません。これを、連結納税制度の投資簿価修正を残すと、譲渡原価が1,500になり、譲渡損500が生じてしまいます。利得が生じているのに課税されないということになってしまいます。
連結納税制度では、持分法のような考え方を適用する訳なので、取得原価と簿価純資産の差額の超過収益力たる「のれん」として捉えてしまい、評価額が1,000になる。そこで含み益を実現させたら譲渡原価1,500になってしまうということです。
言いたいことは分からなくもないが
しかし、超過収益力を買収先が保有していて差額が生じることはいくらでもありうるわけですから、当然のように2重課税が生じ得る制度と言え、良くないと思います。さらなる反論としては、「本当に超過収益力であるなら、簿価純資産を押し上げるはず。」があるかなと考えました。 純資産500の会社を1,000で取得、差額の500が超過収益力たるのれんなのであれば、のれんは500以上のキャッシュを生み出すはずなので、純資産は1,000まで上昇するはずと言えます。
しかし、のれんは会計基準上20年までの償却が容認されているように、超長期的に効果が及ぶことも十分ありうるわけですから、やっぱり問題のある制度という結論に至りました。