連結納税導入のメリットとデメリット

連結納税の概要

企業集団を一体と見なして納税額を算出する制度です。グループ会社間で黒字の会社と赤字の会社があった場合、所得を相殺して法人税等を算出することが出来ます。

連結会計と連結納税の違い

株式会社が株式を保有して子会社、孫会社を作って企業集団を形成するようになると、グループ会社間での利益操作が問題となりました。代表的な例では、親会社が上場会社、子会社が非上場会社であった場合に、親会社が子会社に高額で商品を販売して利益操作を行うようなものです。

そこで、同一の意思決定に属する企業集団を単一体と見なして財務諸表を作成する連結会計制度が導入されました。連結会計は決算書を投資家に開示する際の財務会計上の規定で、税法上の規定ではありません。

対して、連結納税は納税額を算出する際に選択適用可能な制度で、連結会計とは趣旨が異なります。税法においては、「公平な課税」が重視されます。よって、連結納税では100%を保有する完全子会社のみが連結の対象とされるという違いがあります。50%超を保有していれば意思決定は支配できる訳ですが、100%未満の子会社を意思決定を支配しているからといって連結の対象にしてしまうと、内部損益を発生させること等により、相続税、贈与税の脱税が可能になってしまいます。

想定されるケースとしては、会社経営者の父親が、子会社を設立して子会社株式の40%程度を息子に保有させます。ここで、親会社が割安な料金で子会社に資産を売却します。仮に連結納税が適用されれば、内部取引によって生じた損益は相殺消去され、課税が生じることなく経済的価値が子会社に移転します。つまり、父親から息子に課税を生じることなく財産を受け渡せてしまうのです。

また、法人税等には国税と地方税がありますが、連結納税は地方税に対しては適用されません。例えば、事業税は行政サービスの対価としての側面がありますし、確かに相殺消去されてしまうと違和感がありますが、連結納税制度を複雑化させている側面は否めません。

実は連結納税に根本的なメリットはあまりない

連結納税のメリットとして一般に挙げられるのが、所得の相殺です。これは、短期的には大きなメリットなのですが、連結納税を採用しなければ赤字法人には繰越欠損金が蓄積されます。そして、繰越欠損金は適格組織再編によってグループ会社間で移動させることが可能です。長期的に考えれば、連結納税は納税額を減少させることはできず、わずかに納税を遅らせることができるにすぎないのです。

しかし、デメリットはしっかりとあります。交際費の損金算入限度額800万円、法人税率の所得800万円まで軽減税率は、連結納税を採用しなければ法人ごとに適用されますが、連結納税を採用してしまうとグループ全体での適用となってしまいます。他にも、複雑な制度故に扱える税理士は少なく、ソフトウェアも特殊なものが必要となるため、コスト増の影響もあります。グループ全体の業績を把握するために連結決算をする必要性も生じ、手間が増加します。

連結納税は、短期的な資金繰りを助けるだけで長期的な観点からはメリットが乏しいと言わざるを得ません。グループ通算制度が導入されても、長期的にはデメリットしかない点は変わっていませんし(2021年9月時点情報)、普及していかないと感じられます。

どのような企業が導入しているのか

上場企業等でも、連結納税を採用している企業はあります。その理由は、グループ全体として資金繰り管理を行っているため、全体の損益と発生する法人税等を乖離させたくないというものが多いように感じます。損益が予定通りに推移したのに、黒字と赤字の法人が混在したために業績と乖離した法人税等を支払うことで、マネジメントがしづらくなることを防止したいのです。

気持ちは分かるのですが、地方税には適用されないため、意図したことは十分に達成できませんし、計算が複雑化してむしろマネジメントが困難になる例も珍しくありません。

組織再編による繰越欠損金の移動がオススメ

連結納税を導入せず、グループ会社間で黒字法人と赤字法人が生じたら、赤字法人を合併により消滅させて繰越欠損金を移動させることがおすすめです。大手企業もそのようにして、頻繁にグループ間組織再編を繰り返すことで納税をコントロールしております。

注意点としては、税務上の「資本金等の額」が増加するため、法人住民税の均等割りの負担が重くなることです。店舗が多い場合には注意しなくてはなりません。

ホールディングス制を採用すること自体には、マネジメント上のメリットが沢山あります。コストセンターをプロフィットセンターとして管理できるようになれば、効率化が見込めます。このようなメリットを享受しつつ、税制上もメリットを受けるためには、各種制度への理解と対応が必要とされます。

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