表明保証に税金はかかるのか
M&Aで提示された決算書に虚偽表示があったら
多くの場合、M&Aの契約書には表明保証が付されており、虚偽表示があった場合には当該条項に基づいて請求がなされることになります。ただ、請求が正当なものだとしても、相手がそれに応じる資力がないことも十分に考えられ、交渉段階でのしっかりとした調査をしておくに越したことはありません。
取得価額の減額?賠償金?
表明保証に基づき請求し、和解により一定の金額が受領できたとして、それは取得対価の返還なのでしょうか、それとも賠償金なのでしょうか。前者であれば、BSに計上された株式の金額を減算することになり、損益は発生しません。対して、賠償金と捉えれば収益が発生し、法人税等が発生しています。
当然、受け取った方は取得対価の返還であると主張することが多いのですが、契約書において表明保証によって受け取る金銭をそのように定義しておくことが大切となります。契約により、一定の場合には取得対価を返還することとしており、実際に契約に基づいて返還されたら、それを賠償金として認定することは課税庁としてもハードルが高いのです。
契約書の文言だけで決まる訳ではない
とは言え、契約書の文言だけで性質が決定する訳ではありません。請求額の算定方法が明らかに虚偽表示が発見されたことによる対応費用から算出されていたとすれば、賠償金としての性質が強くなります。
契約書を作成する際には、いずれかの分野の専門家によるチェックだけで済ませてしまうことは珍しくありません。しかし、法務リスクがあれば、税務リスクもあり、高値掴みしてしまうリスクもあります。様々なリスクに対応した契約書で手続きを進めることは、取引を成功させるために不可欠であると思います。