PPAは何故日本で普及しないのか
PPAとは
パーチェスプライスアロケーションの略で、取得原価の配分手続きのことです。事業譲渡や合併では個別の資産ごとに取引価額を定めたりせず、合計の買収価額を交渉いたしますが、取引の後には識別可能な資産負債を適切に貸借対照表に計上し、減価償却等を実施しなくてはなりませんので、取引価額を各資産の配分していくらでそれぞれ計上するのか決定する必要があります。
無形資産が論点に
顧客リスト等の無形資産は、通常価値があっても客観的に識別、取引された資産ではないため、貸借対照表に載っていません。しかし、M&Aの際には、資産の認識基準に従って測定しなくてはなりません。簿価ゼロの状態から突如評価額が付されることになるため、インパクトが大きい傾向にあります。
のれんとその他の無形資産
IFRSであれば、無形資産に配分される取得原価が、のれんなのか、それとも商標権や顧客リストなのかという論点は重要となります。何故なら、のれんを償却しないので、PPAの計算結果により損益計算書が大きな影響を受けるためです。
日本の場合、のれんも他の無形資産も税法上5年前後での償却となるため、どちらであってもあまり差異が生じません。監査法人の監査を受ける上場企業であれば話は別ですが、税務調査しか受けない大半の企業にとっては、影響が小さいのです。結果、厳密なPPAは実施されることなく、無形資産の取得原価はすべてのれんに配分されることが多くなってしまうのです。
本当は実施する必要がある
認識の基準がありますので、本来基準に従って資産を認識しなくてはならず、PPAは必須と言えます。実務上の普及は、IFRS導入の広がりに連動したものとなるかもしれません。