ファイナンスリースの会計処理の趣旨

根底にある考え方

何故、資産計上額をリース料や見積購入価額の比較から導くのかが疑問に思うところです。恐らくは、資産負債アプローチに基づく利益概念での「保守主義の原則」のようなものが働いているのだと考えます。すなわち、資産が過大に計上されることについて保守的であるべきという考え方があるのではないでしょうか。

ファイナンスリースの意義

支払ったリース料を費用処理する会計処理しか存在しなかった場合、これは現代で言うオペレーティングリースにあたりますが、経済的実態としては資産を購入しているのに、リース会社を利用してリースという形式にすれば購入した資産や未払の負債をオンバランスしなくてよいため、バランスシートが圧縮でき、自己資本比率を実態よりも良く見せることが出来てしまうという問題点がありました。

このような会計操作により安全性の指標を改善させることを防止するため、実態が資産の購入と同質である場合、売買取引として会計処理させるファイナンスリース取引が登場いたしました。

所有権移転ファイナンスリースにおける借り手の会計処理の意義

貸手の購入価額が判明しているのであれば、貸手の購入価額でオンバランスされます。所有権が移転する以上、割賦購入と経済的実態は同質であり、自身で購入した場合と同額で資産計上されるべきと言えます。貸し手の購入価額は自身が購入していたら生じる支出に他なりません。

貸手の購入価額が不明な場合、見積購入価額とリース料総額の割引現在価値、いずれか安い方がオンバランスの測定値となります。理論上、見積購入価額とリース料総額の割引現在価値は等価であるため、両者に差異が生じた場合には保守的に低い方を採用するのだと考えます。

所有権移転外ファイナンスリースにおける借り手の会計処理の意義

所有権移転外の場合、貸し手の購入価額が判明していたとしても、測定値として優先的に採用される訳ではありません。所有権移転外では、残存価値相当額を将来的に借り手が支出して所有権を取得するか、残存物を返還しなくてはならない点で所有権移転ファイナンスリースとは異なります。

すなわち、借り手はリース時点においては残存価値相当額を除いた部分しか取得しておらず、キャッシュインをもたらすのも残存価値を除いた部分であるため、オンバランスさせるリース資産の測定も残存価値を除いて行うべきと言えます。資産負債アプローチに基づく資産の定義に照らせば、このような考え方になります。

よって、貸手の購入価額や見積購入価額に基づく測定は不合理であると言え、理論上はリース料総額の割引現在価値の方が妥当です。そして、後者の方が残存価値分安くなるはずと言えます。

比較対象となる貸し手の購入価額又は見積購入価額は、資産の過大計上を防ぐキャップとしての働きを期待されていると考えます。

税務上のファイナンスリース取引

フルペイアウトの要件が異なることに注意です。耐用年数基準がありません。オペレーティングリースとファイナンスリースでは、どちらを採用してもPLへのインパクトはあまり変わりません。影響するのはファイナンスリースかつセールアンドリースバック取引に該当する時ぐらいです。

セールアンドリースバック取引の会計処理は益出しの防止を主たる趣旨として導入されたため、税務上はファイナンスリースを広く取る必要がない、という考え方があるのではないでしょうか(?)。

いずれにしても、企業会計と税務会計で取り扱いが分離すると非常に煩雑な事務手続きが必要になりますので、要件に注意しながらリース契約の条項を考えることが肝要です。

償却資産税の取扱

償却資産税は、経済的実態に関わらず形式的な所有者が納付義務を負います。よって、貸手が申告納付します。所有権移転外ファイナンスリースは貸手が所有しているため、貸手が申告納付することは間違いありませんが、所有権移転ファイナンスリースの場合は見解が分かれることがあります。

契約書次第のところもありますが、所有権移転条項が付されていたとしても、残債の支払いを終えるまでは通常所有権が移転しません。割安購入選択権が付されている場合、選択権を行使するまでは貸手が所有していることになります。特殊仕様だったとしても、法的には貸手に所有権があります。

このように考えると、貸手が負担すべきと感じますが、借り手が申告納付すべきと説明されることも多くあります。地方税法では所有権留保付き売買契約として双方に負担義務を課し(共有財産と捉えている)、申告義務を借主としていること等が影響しています。リース契約締結当初から所有権が移転していていると同視しうる場合には借り手が申告することになるのでしょう。実務上は、いずれかが納付していれば支障ありません。リース契約を締結する際に合意しておくことが大切です。

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