セールアンドリースバックの各税制と償却資産税
セールアンドリースバックとは
誤解を恐れずに言えば、固定資産を売却して直ちにリースする取引です。古くは益出しによる会計操作として利用されました。含み益がある資産を有しており、売却&リースを行えば、実態を変えることなく利益を計上できてしまいます。
実態に変化がなく、固定資産の使用を継続する訳ですから、経済的実態としては固定資産を担保とした金銭消費貸借契約であると言え、金融取引としての会計処理が導入されました。
税務上のセールアンドリースバックの定義
税務上のセールアンドリースバック取引の定義が見当たりません。そのため、公正処理基準に基づき、企業会計上の実務指針に従うと解釈されます。前提として、ファイナンスリース取引である必要があるのですが、若干企業会計と税務会計で定義が異なります。フルペイアウトの判断をするために、税務上は耐用年数をベースとする要件がありません。元々、益出しの防止という趣旨であったため、税務上は定義を狭く取っているのでしょうか(?)。
法人税法上の考え方
法人税法では、企業会計と基本的に同様の考え方になります。売却益は繰り延べられ徐々に償却されていきます。
消費税法上の考え方
消費税法上も金融取引と考えるため、消費税が発生しません。利息相当部分は非課税売上になります。
償却資産税法上の考え方
ややこしいのが、償却資産税法上は売買取引として捉えていることです。ストックに担税力を見出して課税しているわけですから、あくまでも所有権を有する者に課税するということなのでしょうか。貸手が原則として償却資産税を払います。
見解が分かれる部分もありますが、所有権移転外ファイナンスリースであれば所有権は貸手にあるので、当然に貸し手が償却資産税を負担することになりますが、割安購入選択権や特殊仕様、所有権移転条項の存在により所有権移転ファイナンスリースに該当したとしても、リース料の支払いを終えるまでは通常所有権が移転しないと考えられるため、やはり貸し手が負担すべきと考えます。
ただ、地方税法上は「所有権留保付の売買契約」として共有財産と捉え双方に納税義務があるとする記載(申告義務は借主)が有ったりして、どちらかが必ず負担してください、申告はきちっと管理している方が申告してください、というニュアンスを感じます。移転外ならリース会社がしっかり管理しますので、リース会社が申告、リース期間終了後に当然に所有権が移転してしまうような場合、貸手に管理は期待できないので借り手が申告してください、ということでしょうか。
所有権移転ファイナンスリースで、所有権の移転が確実視される場合や、割安購入選択権が無償と同視しうる程低廉な場合で、リース契約締結当社から実質的に所有権が移転しているのであれば、借り手が申告することになるのかもしれません。
実務上、課税主体はいずれかから申告、納税がなされていれば特に何も言ってきません。当事者でどちらが負担するかを明確にして合意しておいた方が安心であると考えます。